「俺とトキが・・・ですか?」 後日、養父親に呼び出されたツキハは、話を聞いたあとそう尋ねた。 「えぇ、君たちがです。どうやら普通の悪霊の類とは勝手が違うようで・・・既 に回収に向かった死神の多くが、逆に返り討ちにあっている状況です」 普通、悪霊の多くは攻撃手段を持たない。 磁場に影響を与えたり、取り憑いたりして人間に害をなすのが常である。 それが、死神に攻撃を加えるとは。 「詳しい情報が入っていないので、これ以上は何とも言えませんが。回収が困難 ならば、破壊しても構わないとの命令です」 「好きにしろ・・・という事?」 「まぁ、ぶっちゃけて言えば」 トキの言に、乾いた笑いが返る。 「わかった。行って来ます」 破壊許可が出るほどの悪霊とはまた面倒なものを、と思わないでもなかったが、 これも仕事だ。割り切っていかなければ。 外していた赤いネクタイを締め直すと、ツキハは門へと向かった。 門をくぐると、広がったのは一面の深い緑。 広大な森の遥か上空を、雲に紛れるようにして飛びながら、ポイントを探す。 「・・・・・ここってさ」 「ん?」 「魔女の森″が近くなかった・・・・?」 半眼の眼をますます細めて、心底嫌そうにトキが漏らす。 ツキハは「え――と」と虚空を見ながら記憶を漁った。 魔女″とは言っても、魔法使い″なわけではない。 単にその雰囲気や立場などから、魔女″と呼ばれているだけだ。 正しく言えば、魔界と地上界との仲介役と言った仕事で、彼等は地上界の各地に いる。 ―――ただし、ここでトキの言っている魔女は一人だけだ。 「――・・・あぁ確かに。ルセアナの住んでる森はこの先だな」 「わざわざ名前呼ぶこと無いよ」 フンといささか拗ねたように口を尖らせるトキに、ツキハは小さく息を吐く。 その出会いから、あまりに第一印象が悪かったらしいトキは、出会ってからとい うもの徹底的に彼女を嫌っている。 各言うツキハも、彼女のことはどちらかと言えば苦手だが、それは単に頭が上が らないといった意味合いが強いので、彼女自身は案外気に入っている部類だ。 離し方も丁寧で、淑女と言って申し分ないだろう。 ・・・・・・・ある一点を除いては。 「それはそうと、何か感じるか?そろそろなんだが」 ツキハがスッ…と前を見据えると、隣にいるトキも気を張る。 「・・・・・・ううん、まだ」 リーパー本人よりは、パートナーの方が感知能力が高い。 そのトキが何も感じないと言うのなら、もうこの辺りにはいないのかもしれない。 「とりあえず、一度あっちに連絡を――・・・」 そこまで言ったところで、唐突に言葉は途切れた。 即座に両側に飛び退った二人の間、つまりつい数瞬前まで二人がいた場所を、黒 い何かが物凄いスピードで通り過ぎていった。 「黒い稲妻・・・?」 「何で。さっきまで何の気配もなかったのに」 するりと取り出した赤い羽根を握り込み、ツキハが大鎌を呼び出す。 「要するに」 「少しは気配を消せるってことだろ」 ツキハが言い切ると、瞬時にトキが霊の後ろに回り込む。 まるで瞬間移動したようなそのスピード。 黒いソレは、背後の気配に唸り声を上げた。 黒い靄状の霊魂は、流動しているものの獣の形を取っている。 元は動物霊だったのだろうが、取り込まれるか、人間の味を覚えるかして凶暴化 したのだろう。 ただ。 「解せないな」 攻撃を仕掛けながらツキハが小さく呟く。 「何が」 「この黒い稲妻さ」 頭の横で浮遊しているトキを流し見、すぐに視線を戻す。 攻撃は雷撃一種のみ。しかしながら、あまりに広範囲の上、定まった形を持たな いので、なかなか近付くことが出来ない。 「トキ。雷を使う動物を知ってるか?」 「知ってるも何も・・・いない″だろ、そんなの」 「なら、何故ヤツは雷を使う?」 「・・・・・・・捕まえる?」 少しの間の後、問いが返された。 「―――面倒くさいんだがな」 「多分研究室は大喜びだよ」 「あいつら喜ばせても嬉しくない」 軽口を叩きながら、真っ直ぐに向かってきた雷を鎌で薙ぎ払うと、すぐさま攻撃 へと転じる。 兎にも角にも、まずはこの雷をどうにかしなければ。 Top Back Next
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